冬物語。

2004年10月28日 言の葉。
自慢だった長い髪を切って、口を歪めた。

「これでいいかしら」

髪を切るのは失恋の証だなんて、誰が決めたの?
鋏を乱雑に仕舞い込みながらそんなことを考えて、あきは笑った。
これはせめてもの復讐心と、自分から終わらせてやるための過程だった。

一年間付き合った相手の浮気を知って、見せしめるかのように学校内で行ったソレ。
目を瞬いてポカンと口を開けた彼がおかしくて、あざ笑うように口元をひねる。

長い髪が自慢だった。
でもそれは、あの日彼が褒めてくれたからだった。

躊躇うことなく切り裂くと、はらはらと舞い落ちた髪の毛。
幾筋も舞う様は、それが自分の一部であったことを忘れさせそうだ。
自分のものではないモノを見つめるのは、何だか気持ち悪くてそっと目を背けた。

「どうして…」

状況の飲み込めていない様子の彼に、あきは携帯を強く投げつけてから、声をたてて笑った。
おかしくてたまらないように。
泣きそうなことがばれないように。

「私も 恋がしたいわ」

それだけを言ってきびすを返すと、投げた携帯すら拾わず、鞄一つも持たず、学校を出た。

恋がしたかった。

彼のくれた日常的な想いではなく、追いかけて追い縋るような、そんな恋がしたくて。

足かせのように引きずり続けた
長くて黒い
自慢の髪を手ずから切った。

長い髪が自慢だった。
それでも。

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